こんにちは。yuzu(@yuzu_happysmile)です。
2019年10月に消費税が10%の増税されたことは記憶に新しいかと思いますが、実は2020年1月から隠れ増税が始まります。
年収850万円の壁という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、年収850万円以上の方を対象に、税金の控除金額が下がる為、実質的に税負担が重くなります。
昇進などに伴い給与がアップする人もいるかと思いますが、給与収入がアップしても所得が増えるわけではありません。
どのような仕組みで隠れ増税がおこなわれるのか、実際に隠れ増税がおこなわれる前に仕組みを理解して、対策の検討をしましょう。
額面と手取りの違い
年収850万円の壁の話をする前に、まずは「額面」と「手取り」の関係について紹介をしたいと思います。
みなさんよく「年収はいくら?」ということを気にされると思いますが、一般的に年収というと「額面」のことをさしています。
「額面」とは、給料の基本給だけでなく、残業代や交通費、住居手当や家族手当などの諸手当を合計した金額のことです。
額面以外にも給料を表すのが「手取り」です。
毎月額面の給料からさまざまな税金がひかれ、実際に銀行口座に振り込まれる金額が「手取り」です。
「手取り」とは、額面から保険料や税金などを控除した後の金額をさします。
単純に額面の年収が上がっても、同じだけ保険料や税金などが増える場合は、手取り金額は変わらず、ぬか喜びになってしまいます。
世の中的に「850万円の壁」の対象となるのは、額面の金額に対してです。
額面で850万円の年収をもらっている方は、2020年1月から何が起こるのか見ていきましょう。
令和2年(2020年)からの税制改正
給与所得控除の変更
2020年1月からは「給与所得控除」の金額が変わります。
給与所得控除は額面の所得に対して、一定額差し引くことができる控除額のことです。
給与所得控除額は給与によって変化し、収入が多いほど控除率は下がります。
■2019年まで
給与等の収入金額 | 給与所得控除額 |
180万円以内 | 収入金額×40% 65万円に満たない場合は65万円 |
180万円以上-360万円以下 | 収入金額×30%+18万円 |
360万円以上-660万円以下 | 収入金額×20%+54万円 |
660万円以上-1,000万円以下 | 収入金額×10%+120万円 |
1,000万円以上 | 220万円(上限) |
■2020年以降
給与等の収入金額 | 給与所得控除額 |
180万円以内 | 収入金額×40%-10万円 55万円に満たない場合は55万円 |
180万円以上-360万円以下 | 収入金額×30%+8万円 |
360万円以上-660万円以下 | 収入金額×20%+44万円 |
660万円以上-850万円以下 | 収入金額×10%+110万円 |
850万円以上 | 195万円(上限) |
2020年以降においては、給与所得控除額に今までと異なる点が2点あります。
- 控除額が一律10万円引き下げられること
- 給与等の収入金額の上限が850万円となること
仮に850万円の年収の方は2019年の場合は、控除額が205万円だったものが、2020年の場合は、195万円となります。
もちろん、850万円以上の場合は一律で上限195万円となるため、一律税金負担が高くなることがわかります。
ちなみに、給与所得控除額だけを見ると、一律10万円下がっていることからわかるように、年収に問わず控除額は減少しており、実質的な増税となります。
基礎控除の変更
給与所得控除が一律10万円下がり、年収にかかわらず一律増税になるのではと思われるかもしれませんが、2020年以降は基礎控除が変更されます。
基礎控除は全ての納税者に対して適用されるもので、これまでは基礎控除に対して適用要件がなく、一律38万円が控除されていました。
2020年からですが、基礎控除額が変わります。
合計所得金額 | 控除額 |
2,400万円以下 | 48万円 |
2,400万円以上-2,450万円以下 | 32万円 |
2,450万円以上-2,500万円以下 | 16万円 |
2,500万円以上 | 0円 |
合計所得が2,400万円以上の方は基礎控除額が減少しますが、ほとんどの方は、今までよりも10万円控除額が増えることとなります。
年収850万円の壁とは
年収850万円の壁についてですが、2020年からは「給与所得控除と基礎控除」の変更に伴い、年収850万円までは2019年までと控除額の変化はありません。
ただし、年収(額面)が850万円以上の方に関しては、控除額減少に伴い、実質的な増税対象となるため、850万円の壁と世間で騒がれているのです。
実際に、いくつかの年収で比較してみましょう。
わかりやすいように、基礎控除と給与所得控除のみを対象にします。
年収 | 2019年控除額 | 2020年控除額 |
500万円 | 192万円 | 192万円 |
700万円 | 228万円 | 228万円 |
850万円 | 243万円 | 243万円 |
900万円 | 248万円 | 243万円 |
1,000万円 | 258万円 | 243万円 |
年収850万円を境目にして、控除額が増加していないことがわかります。
2019年以前はこの金額が1,000万円となっていたものが850万円に下がったことがわかります。
年収1,000万円の方では、2019年と比較すると2020年においては、15万円ほど課税対象額となります。
この時、課税額としては約3.5万円増額されることとなります。
- 2019年:(1,000万円 – 258万円) × 0.23% – 63.6万円 = 110.5万円
- 2020年:(1,000万円 – 243万円) × 0.23% – 63.6万円 = 107万円
ちなみに、現在の所得税の税率はこちらになっています。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円以上-330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円以上-695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円以上-900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円以上-1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円以上-4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 4,796,000円 |
たかだか35,000円かもしれませんが、消費税の増税に合わせて、着々と増税は進行していることがわかります。
隠れ増税に伴う新設の控除
今回の隠れ増税に伴って、家計はますます苦しくなっていくばかりです。
そのため、今回の隠れ増税に合わせて、年収850万円を超える方で、介護や子育て世代の負担が増えないように、新しく「所得金額調整控除」が創設されました。
これは給与所得控除の引き下げが行われる2020年より適用が始まります。
所得金額調整控除は、「年収が850万円を超える」という条件とともに、
- 本人が特別障害者である場合
- 23歳未満の扶養親族がいる場合
- 特別障害者である同一生計配偶者または扶養親族がいる場合
のいずれかに該当している場合に該当となります。
所得金額調整控除はこちらの計算式で算出されます。
控除額 = (給与等の収入金額(年収) – 850万円) × 10%
で算出されますが、年収が1,000万円以上の場合は、計算式の「給与等の収入金額(年収)」は一律で1,000万円で計算します。
給与が900万円の場合は、5万円が控除されるイメージです。
こちらは、年末調整で適用を受ける場合に、「所得税調整控除申請書」の提出が必要になります。
増税は半ば強制的に徴収されますが、控除や優遇を受ける場合は申請がいるものばかりですので、対象となる方は必ずご対応されることをお勧めします。
まとめ
いかがだったでしょうか。
消費税の増税で家計が苦しくなったところに、更に隠れ増税が水面下で行われています。
頑張って給料が上がっても税金で徴収される金額は年々増加しており、給料が上がるほど税率も高くなるため、家計はなかなか楽にはなっていきません。
給料が上がっていくことも大事ですが、本当に大事なのは額面ではなく手取りの金額です。
税金の考え方は年々変わっているので、今回は影響がない方でも、仕組みを知って興味を持つようにしましょう。