2019年4月に新円切り替えの発表があり、2024年の新円切り替えのタイミングで財政立て直しのために、財産税を導入するのではという話をさせていただきました。
財産税導入にあたっては、日本では戦後実際に実施されている施策であり、現実的に起こり得る施策として考えられるものです。
※新円切り替えによる政府の狙いについてはこちらをご覧ください。
本記事の反響は大変大きく、「財産税に備えて何をしなければいけないのか」「どんな準備をすることができるのか」という質問を多くいただきました。
また、先日銀行口座においてもマイナンバー管理されるという報道まで出ており、政府は本腰を入れて国民の財産を把握しにきているものと思われます。
いつ財政施策が打たれてもおかしくない状況の中で、財産税やデノミに備えて資産を守るためにやるべきことを紹介します。
Contents
なぜ財産税が騒がれているのか!?

日本の財政状況
財産税導入の話をする前に、なぜ財産税の話題が上がっているのか、みていきたいと思います。
日本の状況を見るために、各国と比較してみていきます。
下図は2005年から2018年までの日本および各国の名目GDPの推移となります。

日本はグレーの線となりますが、2005年からおよそ5兆ドル付近でずっと推移していることがわかります。
アベノミクスによる好景気などと政府からメッセージは出ていますが、名目GDPの観点から見ると経済成長はしていないと読み取れます。
それに引き換え、アメリカはこの10年間も堅調に経済成長を遂げており、NWダウは過去最高額となっています。
アメリカに関しては、11/3の大統領選挙まではトランプ大統領がなんとしても好景気を保ちたいと考えているため、今後も堅調に成長することが予測されます。
また、先日経済成長率が6.1%に鈍化したというニュースが話題となった中国ですが、名目GDPはアメリカよりも急激に成長しており、近い将来中国が世界の覇権をとっていくことも時間の問題に思われます。
各国が成長を遂げている中で、日本はなかなか成長ができていないということが読み取れました。
もう一点、日本の財政状況を見る上で「国の借金」についてもみていきます。
下図は各国のGDPと比較した際の債務残高を表しています。
こちらはあえて財務省が出している「財政に関する資料」から引用しました。


みていただければ一目でわかるように、各国の比較したときに日本の債務状況は危機的状況にあることがわかります。
一時期「財政破綻の危機」とまで言われたイタリアと比較しても2倍近い水準で推移していることがわかります。
かなり異様な数値ではありますが、政府からは債務の中でも大きな国債においてほとんどが日本国内への貸付であることや家計資産額が約1800兆円であることから危機的状況ではないという見解を示しています。

政府は東京オリンピックまでは好景気を継続させたいと思っており、日銀の株や債権の買い支えはまだまだ続くと思われます。
見た目の好景気は演出されますが、実経済がついてきていない中で、いつ破綻の危機が起きてもおかしくはない状況にあると思っています。
過去の財政対策
1946年(昭和21年)2月に新紙幣の発行をしました。
これは戦後復興期のインフレを抑制するために緊急措置として実施されました。
この時は、同時に預金の封鎖をし、流通中の紙幣を利用停止にし、旧紙幣はある期日までに金融機関に預け入れしなければ価値がなくなるものとしました。
当時は、戦後の混乱期の真っ只中で、巨額の軍事費支出のために、インフレが進行し、日本国の財政は破綻寸前まで追いやられていました。
この時実施されたのが、金融緊急措置令(1946年2月16日)です。
措置例の中身はこちらです。
- 旧紙幣は3月2日まで利用可能
- 旧紙幣と新紙幣の交換は2月25日から3月7日までで交換限度は1人につき100円まで
- それ以上の旧紙幣は預金として封鎖し、預金引き出しは1ヶ月につき世帯主300円、家族1人につき100円
- 給料の支払いは1人につき500円まで
日本においてもデノミは発生しています。
この時同時に財産税の徴収も実施されています。
税率は累進課税であり、当時の貨幣価値や物価基準で以下の通り設定されています。
課税価格 | 税率 |
---|---|
10万円超-11万円以下 | 25% |
11万円超-12万円以下 | 30% |
12万円超-13万円以下 | 35% |
13万円超-15万円以下 | 40% |
15万円超-17万円以下 | 45% |
17万円超-20万円以下 | 50% |
20万円超-30万円以下 | 55% |
30万円超-50万円以下 | 60% |
50万円超-100万円以下 | 65% |
100万円超-150万円以下 | 70% |
150万円超-300万円以下 | 75% |
300万円超-500万円以下 | 80% |
500万円超-1,500万円以下 | 85% |
1,500万円超 | 90% |
このようにデノミと財産税を同時に徴収することで、財政危機を乗り越えたという過去に実例があります。
また近年では、2004年の新円切り替えのタイミングでデノミと財産税を導入するという動きがあったという話を当時の塩川財務大臣も国会で認めています。
当時描かれていたとされるシナリオは以下の通りです。
- 新円切り替えで、新貨幣の発行に伴って、銀行預金が封鎖され、新紙幣でしか預金が下せなくなる
- 同時に財産税も課税する
- 財産税の徴収で、当時約700兆円あったといわれる国債や地方債の借金を棒引きする
といった話も出ています。
危険を煽りたいという気持ちがあるわけではありませんが、現実的にそのような事実があったということは受け止めた方が良いことだと思います。
資産を守るためにすべきこと

海外口座に資産を移す
海外に口座を持ち、外貨で預金をすることがリスクヘッジとしては良い手法のひとつです。
これには2つの観点でメリットがあります。
- デノミや財産税の対象になる可能性が極めて低い
- 円の価値が低下するリスクに備えることができる
海外口座に預金をすることで、マイナンバーの管理なども当然ないため、デノミの影響や財産税の影響を受けるリスクが極めて低いものになります。
海外資産まで追ってくるという動きもあるようですが、多額の資金を運用している方から目につく可能性が高く、リスクヘッジ策としてはかなり有効な手立てです。
また、今後日本の経済成長が見込めない中で、経済成長がなければ日本の立場はどんどん弱くなっていきます。
そうなると日本円の価値は相対的に弱くなっていく可能性があり、資産が円だけの場合は、どんどんと資産が目減りしていく可能性があります。
ご自身の資産を円だけでなく他の通貨も持つことでリスクヘッジできる点でもすごく有効な手段となります。
とはいえ、2000年ごろより台湾やシンガポール などで口座を開設する人が増えていますが、年々日本人が口座を持つことが厳しくなってきています。
誰もがすぐに打てる手立てではありませんが、リスクヘッジ策としては検討すべきものの一つです。
現金以外の資産にする
新円切り替えの主目的の一つには日本にあるタンス預金の炙り出しがあります。
正確な数字はわかりませんが、日本のタンス預金はおおよそ50兆円ほどあるといわれており、新円切り替えで旧紙幣を交換せざる得ない状況になります。
そのため、タンス預金の炙り出しは間違いなく実施されることの一つだと思います。
前置きが長くなりましたが、現金以外の資産にする中で、いくつか実例をあげたいと思います。
株式投資
株式投資は証券会社経由で行いますが、現在は証券会社で取引する場合にはマイナンバーの提出が求められるため、財産税で対象になる可能性はあります。
ただ、デノミの影響は受けることはないと考えられるため、リスク回避の一助とはなります。
口座開設は無料でできますので、まずはいつでも投資ができる環境づくりをされることをおすすめします。
投資信託(ETF)
証券会社から購入できる投資信託も財産税の対象とはなりますが、デノミ対策としては有効な手立ての一つだと思います。
現在はロボアドバイザーと呼ばれる自動で運用をしてくれ、手数料も安いサービスも出ており、昔よりも投資のハードルが下がっています。
数あるロボアドバイザーの中でも個人的におすすめなのは、ウェルスナビ(WealthNavi)です。
現在日本において口座開設数と預かり資産でNo.1のサービスです。
こちらも口座開設は無料でできるので、まずは投資できる環境を整えるのはいかがでしょうか。
※こちらもマイナンバーの申告が必要となります。
金への投資

有事の時の金といわれますが、政治不安定や戦争などの時に注目される金は現在は購入の際にマイナンバーは必要となりません。
ただし、売却の際に受取額が200万円を超える場合は、マイナンバーの申請が必要になります。
デノミや財産税のリスクを回避する手立ての一つの手段となります。
まとめ
いかがだったでしょうか。
日本経済が右肩上がりで伸びていくのが難しい中で、財政赤字はどんどん拡大の一歩を続けています。
2024年の新円切り替えを5年まえに発表されたことを鑑みた際にも、何かしら政府が財政立て直しの施策を実施する可能性があります。
個人レベルでもできる対策をしっかりと練って、将来不安に備えましょう。